東京では子供2人私立なら世帯収入1,000万円でも親の援助が必要 – 格差社会ならぬ階級社会の到来?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

東京では石原さんが推進した都立高改革や中高一貫校制度の導入以降、公立校の人気がかなり高まっている。しかし私立上位校の人気は相変わらず高く、偏差値も、大学上位校合格実績も共に下がっていない。

東京で子供2人を私学に通わせようとすると、どうしても1,000万円以上の世帯収入が必要になる。平均的な世帯では、祖父母からの経済的な支援をあてにしなければ子供2人を私学に通わせることは難しいだろう。

一方で晩婚化の影響により、今の親世代が自分の孫の教育費を援助できるかどうかについては、年齢的な問題から経済的援助をすることがかなり厳しい世帯が増えるのではないかと予想できる。

大学上位校に入るためには私学に通わなければならないというわけでは無い。しかしながら、大学上位校に入学する学生のうち私学出身者が占める割合が多いこともまた事実だ。

統計上は学歴や学力と生涯収入には相関関係があることがわかっており、卒業した大学によっても同年齢年収に差がでるとの私企業による調査結果もある。(なお、この部分の記述については分布をみていないので、具体的にどの程度の相関があるかについては勉強不足で不明です。)

数十年の長期的な視点に立てば、現在のような社会制度が続く場合、代々費用のかかる教育を受けることのできる家とそうでない家では、階級といっても良いほどの格差が生まれかねないということは想像に難くない。



子供二人を私立校へ通わせる年収1000万円の家庭の例

夫婦に子供2人の4人家族で年収1,000万円余りの場合、だいたい手取で700万円台の後半ぐらいになるだろう。所得税や社会保険料などの合計でざっくり200万円以上を源泉徴収される。

共働きの世帯収入1,000万円なら税金が減るのでもう少しマシだろう。ただその場合でも、両親と同居していないと保育園や学童などの費用が余計に発生するので、可処分所得は大きくは変わらない。

そもそも両親のどちらかが時間の自由がきく仕事でないと、子供を私立に通わせることはかなりハードルが高くなる。というわけでここでは、親のいずれかが専業主婦/夫である家庭を考える。

毎月平均の可処分所得は、65万円(年間780万円)と見立てておこう。

家計

毎月の固定費は、以下のような感じだろう。

  1. 学費:8万円 ✕ 2人 = 16万円
  2. お稽古事:2万円 ✕ 2人 = 4万円
  3. 家賃または住宅ローン:15万円
  4. 携帯電話代(4人分):2万円
  5. ガス・水道・電気:4万円
  6. 食費:8万円
  7. 車両費(ローン・保険含む):6万円
  8. 生命保険など:3万円

合計:58万円

年額にするとおよそ700万円だ。

働き手の昼食や交際費に月4万円、年間48万円かかるとすると残りは30万〜40万円程度となってしまう。

さらに私学の場合は交通機関を利用しての通学が普通になってしまうので子供の定期代がかかる。また合宿費、教材費などの追加支出と服飾費やレジャー費、医療費などを加えるとカツカツか赤字だ。

また、進学するたびに発生する入学金や寄付金など、数年に一度発生する30万円から50万円の支出に備えて積立も行わなければならない。

しかも、ほとんどの給与所得者は年2回のボーナスを含めての年収計算となるので、月給は単純12分割した65万円よりもかなり少ない。従って、毎月のキャシュフローでみると大赤字で、これをボーナスで補填する構造となってしまう。

付属大学へ進級しない場合はさらに追加支出が

大学の付属校ではない私立であったり、付属校でも東大などの国立受験が当たり前の環境になっている私立の場合では、早いと高1の三学期ごろから家庭教師や通信教育、予備校や冬期・夏期講習、全国模試などを受ける生徒が出始める。

こうなると更に追加で、30万円から100万円ぐらいの年間支出を覚悟しなければならない。親の小遣いを減らしたり食費や光熱費を切り詰めたりしてやりくりすることさえ難しくなってしまう状況だ。

余裕を持った生活の為には、どうしても1,200万円ぐらいの世帯収入が必要になってしまうのだ。

子供を持つ世代の給与水準と職の安定

そもそも子供が就学する30代で1,000万円をもらっているサラリーマンは、上場会社であってもかなり少ない。外資系や大手の金融機関、メディア関係などの一部の範囲に限られる。

今時は、医者や弁護士でも、勤務医やイソ弁だと30代後半になってようやく1,000万円ぐらいになる感じだろう。もちろん収入のバラつきはどの職種にもあるので、1,000万円以上の年収を手にできている方は2σ超えだと素直に喜ぶべきだ。

私学の保護者会などで出会う夫婦は、サラリーマン家庭に限って見ると、高齢出産だったり夫の年齢が一回りぐらいちがう年の差夫婦だったりと、夫が30代後半で第一子目を設けたという家庭がかなり多い。

90年代前半までの日本は終身雇用が前提で給与も毎年上昇する傾向にあったが、最近20年間ほどの状況はかなり厳しくなっている。現代においては、若いうちに将来の昇給を見越して無理な支出を覚悟することが難しくなっている。

また、子供がちょうど大学受験をしたり大学に入学するもっともお金がかかる時期が、働き手である親のリストラや子会社への転籍などが言い渡される時期と重なるのも間が悪い。

現在の日本の社会構造は、経済的な部分のみを見れば、子供を持つこと自体が人生における最大のリスクになってしまっているのだ。

お受験しなければかなりリッチなんだけど

仮に公立に行っていたとしても、中学受験や高校受験をするとなると小学校3年の三学期ぐらいから塾通いがはじまり、結果的に似たような支出構造となる。夏期講習や冬期講習を厚めに取るとさらに費用がかさむ。

東京の場合、石原さんの号令のもとで都立改革が行われるまで、優秀な学生が集まるのは(筑駒などの国立系と一部の都立を除き)私立高校だった。都立改革や一貫校制度が開始され勢力図は少なからず様変わりしたものの、偏差値70以上の中高一貫校については今も私立がかなり優勢だという他県とは違った特殊な事情がある。

うまいこと狭き門をくぐり公立一貫校に入れたとしたなら、それはかなり親孝行な子供だ。しかしその可能性がかなり厳しいことをわかっている家庭は、なるべく早く、たとえば幼稚園とか小学校の段階でエスカレーター付きの私立に子供を入れたくなるのだ。

一人っ子か、それとも祖父母世代からの援助をあてにするか

そもそも子供を持つ世代で年収1,000万円を取れる人が少ないのに、そういう家庭でさえ子供二人を私立に入れることは経済的にかなり厳しい。

したがって、私学に子弟を通わせる多くの家庭は、祖父母世代からの経済的な支援があることが前提となる。祖父母世代が死蔵している貯金を吐き出させる目的もあって教育資金の生前贈与非課税制度が導入されたが、実態としても親世代だけで子供の教育費を負担できる状況ではない。

お受験しなければかなり裕福な生活ができるのだが、教育を与えられて育ってきた親としては、自分の子供にも教育を与えない訳にはいかないという呪縛にとらわれ、かなりの無理ゲーをすることになる。

無理ゲーを避けるには、第二子を設けないという選択肢もある。一人っ子であれば祖父母世代の力を借りずとも何とかできるだろう。また、年収が600万円ぐらいであっても、高所得者が所得制限で受けることのできない給付金や補助や減免措置などを受けることができ、また所得にかかる税率も小さいので、一人っ子であればどうにかなりそうだ。

少子化には、こういった社会構造も関係していると僕は考えている。

(長くなったので続きは、書きたくなった時に別の記事に書くことにします。)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る


コメントを残す